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有機ディラック電子系の面間磁気抵抗

有機ディラック電子系の面間磁気抵抗

有機ディラック電子系α-(BEDT-TTF)2I3では,フェルミ準位がちょうどディラック点にあります.一方,よく知られているように,ディラック電子系では磁場をかけるとエネルギーゼロのランダウ準位が形成されます.そのため,このディラック電子系の面間の磁気抵抗は負になります.しかし,低磁場領域では磁気抵抗が正になる領域があります.この振る舞いについて一度論文を書きましたが,釈然としない点が残っていました.一見,理論は実験とよく一致するのですが,実験データを理論式でフィッティングするとフェルミ速度が半分以下になります.改めて面間の電子のホッピングを検討したところ,磁場下でバレー間の散乱が存在することがわかり,その効果を取り入れることで正の磁気抵抗から負の磁気抵抗への移り変わりをすっきりと理解できました(J. Phys. Soc. Jpn. 90, 104709 (2021)).また,フェルミ速度については,温度効果によって有限温度ではフェルミ速度が見かけ上,小さくなります.絶対零度の極限では,このフェルミ速度のずれがなくなります.

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