京都大学の森成物性理論研究室のホームページです。


有機導体における量子異常効果!

ブログ

有機導体α-(BEDT-TTF)2I3は,擬2次元のDirac電子系として理論的・実験的に研究がなされてきました.しかし,理論計算(TM, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 073705 (2020))から低温で3次元Dirac半金属状態の可能性が示唆され,もし理論が正しければ負の磁気抵抗やプラナーホール効果といった量子異常効果が実験的に観測されることになります.この量子異常効果の存在を明らかにした東邦大学の田嶋先生らの実験結果が,今月出版されました(N. Tajima, Y. Kawasugi, T. Morinari, R. Oka, T. Naito, and R. Kato, J. Phys. Soc. Jpn. J. Phys. Soc. Jpn. 92, 123702 (2023)).今後,さらなる展開が期待されます.

修士2年の中村優希さんの論文がJ. Phys. Soc. Jpn.のLetterに出版されました.有機導体α-(BEDT-TTF)2I3における3次元ディラック半金属状態の量子異常効果を理論的に解析した論文です.ディラックコーンの傾きを取り入れたモデルに基づき,ベリー位相効果を取り入れて磁気伝導度を理論計算し,最近の実験で確認されたプラナーホール効果と整合する結果を得ています.実験の論文も近々出版予定で,これらの論文により,擬2次元系として研究されてきた有機導体α-(BEDT-TTF)2I3が,低温で場の理論における量子異常効果と関係した3次元ディラック半金属として振舞うことが明らかになってきました.

吉田鉄平研究室と合同で,表記の会を開催しました.第18回 物性セミナーでカゴメ超伝導体AV3Sb5について講演していただいた田財さん,基研の花井さんと一緒に,楽しい時間を過ごしました.

笹本くんと中村さんが,仙台で開催された日本物理学会第78回年次大会で発表しました.笹本くんは「 グリーン関数の運動方程式を用いた量子スピン系の理論とその応用」について,中村さんは「有機ディラック電子系におけるプラナーホール効果の理論」について口頭発表しました.森成は「有機導体ディラック電子系におけるフラックス状態」について発表しました.ほとんどコロナ前に戻ったような学会の雰囲気で,多くの方々と議論していただきました.

吉田鉄平研究室と合同で新入生歓迎会を開催しました.久々の開催で,とても楽しいひとときを過ごせました.

▲PAGETOP