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JPS Hot Topics

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有機導体の3次元ディラック半金属における量子異常効果に関する共同研究がJPS Hot Topicsに選出されました.

Chiral Anomalies in Organic Dirac Semimetals

修士2年の笹本大樹さんの論文がJ. Phys. Soc. Jpn.に出版されました(J. Phys. Soc. Jpn. 93, 024704 (2024)).任意の格子系において,反強磁性ハイゼンベルク型で相互作用するS=1/2の量子スピン系に対して,Green関数の運動方程式の定式化とその解析方法を示した論文です.この手法は,短距離相関を記述でき,さらに高温で正確になるという特長があります.さまざまな系に適用することで,新たな展開が期待できます.

有機導体α-(BEDT-TTF)2I3は,擬2次元のDirac電子系として理論的・実験的に研究がなされてきました.しかし,理論計算(TM, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 073705 (2020))から低温で3次元Dirac半金属状態の可能性が示唆され,もし理論が正しければ負の磁気抵抗やプラナーホール効果といった量子異常効果が実験的に観測されることになります.この量子異常効果の存在を明らかにした東邦大学の田嶋先生らの実験結果が,今月出版されました(N. Tajima, Y. Kawasugi, T. Morinari, R. Oka, T. Naito, and R. Kato, J. Phys. Soc. Jpn. J. Phys. Soc. Jpn. 92, 123702 (2023)).今後,さらなる展開が期待されます.この論文はEditor’s choiceに選出されました.

修士2年の中村優希さんの論文がJ. Phys. Soc. Jpn.のLetterに出版されました(J. Phys. Soc. Jpn., 92, 123701 (2023)).有機導体α-(BEDT-TTF)2I3における3次元ディラック半金属状態の量子異常効果を理論的に解析した論文です.ディラックコーンの傾きを取り入れたモデルに基づき,ベリー位相効果を取り入れて磁気伝導度を理論計算し,最近の実験で確認されたプラナーホール効果と整合する結果を得ています.実験の論文も近々出版予定で,これらの論文により,擬2次元系として研究されてきた有機導体α-(BEDT-TTF)2I3が,低温で場の理論における量子異常効果と関係した3次元ディラック半金属として振舞うことが明らかになってきました.

吉田鉄平研究室と合同で,表記の会を開催しました.第18回 物性セミナーでカゴメ超伝導体AV3Sb5について講演していただいた田財さん,基研の花井さんと一緒に,楽しい時間を過ごしました.

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