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研究室に新メンバーとして笹本大樹さん,中村優希さんが加わりました.(04/01/2022)

有機ディラック電子系α-(BEDT-TTF)2I3では,フェルミ準位がちょうどディラック点にあります.一方,よく知られているように,ディラック電子系では磁場をかけるとエネルギーゼロのランダウ準位が形成されます.そのため,このディラック電子系の面間の磁気抵抗は負になります.しかし,低磁場領域では磁気抵抗が正になる領域があります.この振る舞いについて一度論文を書きましたが,釈然としない点が残っていました.一見,理論は実験とよく一致するのですが,実験データを理論式でフィッティングするとフェルミ速度が半分以下になります.改めて面間の電子のホッピングを検討したところ,磁場下でバレー間の散乱が存在することがわかり,その効果を取り入れることで正の磁気抵抗から負の磁気抵抗への移り変わりをすっきりと理解できました(J. Phys. Soc. Jpn. 90, 104709 (2021)).また,フェルミ速度については,温度効果によって有限温度ではフェルミ速度が見かけ上,小さくなります.絶対零度の極限では,このフェルミ速度のずれがなくなります.

有機ディラック電子系の量子相転移についての解説記事が固体物理10月号に掲載されました.田嶋先生作成の図が,表紙を飾りました.

東邦大学,分子研,理研メンバーの方々との共同研究( J. Phys. Soc. Jpn. 89, 123702 (2020))が Journal of the Physical Society of JapanのEditor’s Choiceに選ばれました.質量ゼロの有機ディラック電子系の量子相転移に関する成果で,強相関効果によって量子ゆらぎが抑制されるにも関わらず,不思議なことに質量ゼロの性質を保ったままであることがわかりました.量子臨界点に近づくにつれて,フェルミ速度が減少しますが,強相関効果を取り入れた理論計算は,実験結果と非常に良い一致を示します.

量子力学では,座標と運動量が非可換になりますが,粒子数と非可換になるのは,波動関数の位相です.強相関電子系における顕著な現象として,金属-絶縁体転移がありますが,単純な解析では絶縁体にならないのに,位相ゆらぎによって絶縁化を説明できる場合があります.有機導体λ-(BETS)FeCl4における金属-絶縁体転移において,位相ゆらぎが重要な役割を演じていると考えられます.(T. Morinari, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 093702 (2020).)

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