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武上さんの論文が出版されました

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修士2年の武上響生さんの論文がJPSJに出版されました(J. Phys. Soc. Jpn. 93, 083703 (2024)).基底状態が厳密に解け,Majorana粒子が存在すると予想されているKitaev模型を,スピンのGreen関数の運動方程式を用いて解析した論文です.この手法を用いて計算した相関関数の温度依存性は,高温領域では高温展開と一致し,絶対零度では厳密に知られている値に極めて近い値を示します.エネルギーの温度依存性は,モンテカルロ法で生成したZ2ゲージ場中を遍歴するMajorana粒子で計算した結果とよく一致します.さらに,ある種の有限温度の相関関数が恒等的にゼロになることも厳密に示せます.これらの結果により,Green関数の運動方程式の手法が,Kitaev模型の解析にとても有効なことがわかりました.

笹本大樹さん,中村優希さんが大学院修士課程を修了されました.笹本さんは,当研究室で推進している研究手法の開発に多大な貢献をされました.中村さんは,量子異常に関する実験結果を見事に説明する理論を構築されました.
お二人とも在籍中に学術論文を出版し,すでに論文や学会等で引用されています.誠実な人柄と明るい雰囲気で,日々の研究室活動でも大いに活躍されました.これからの更なるご活躍を楽しみにしています.

有機導体の3次元ディラック半金属における量子異常効果に関する共同研究がJPS Hot Topicsに選出されました.

Chiral Anomalies in Organic Dirac Semimetals

修士2年の笹本大樹さんの論文がJ. Phys. Soc. Jpn.に出版されました(J. Phys. Soc. Jpn. 93, 024704 (2024)).任意の格子系において,反強磁性ハイゼンベルク型で相互作用するS=1/2の量子スピン系に対して,Green関数の運動方程式の定式化とその解析方法を示した論文です.この手法は,短距離相関を記述でき,さらに高温で正確になるという特長があります.さまざまな系に適用することで,新たな展開が期待できます.

有機導体α-(BEDT-TTF)2I3は,擬2次元のDirac電子系として理論的・実験的に研究がなされてきました.しかし,理論計算(TM, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 073705 (2020))から低温で3次元Dirac半金属状態の可能性が示唆され,もし理論が正しければ負の磁気抵抗やプラナーホール効果といった量子異常効果が実験的に観測されることになります.この量子異常効果の存在を明らかにした東邦大学の田嶋先生らの実験結果が,今月出版されました(N. Tajima, Y. Kawasugi, T. Morinari, R. Oka, T. Naito, and R. Kato, J. Phys. Soc. Jpn. J. Phys. Soc. Jpn. 92, 123702 (2023)).今後,さらなる展開が期待されます.この論文はEditor’s choiceに選出されました.

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