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JPSJのEditor’s Choice

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東邦大学,分子研,理研メンバーの方々との共同研究( J. Phys. Soc. Jpn. 89, 123702 (2020))が Journal of the Physical Society of JapanのEditor’s Choiceに選ばれました.質量ゼロの有機ディラック電子系の量子相転移に関する成果で,強相関効果によって量子ゆらぎが抑制されるにも関わらず,不思議なことに質量ゼロの性質を保ったままであることがわかりました.量子臨界点に近づくにつれて,フェルミ速度が減少しますが,強相関効果を取り入れた理論計算は,実験結果と非常に良い一致を示します.

量子力学では,座標と運動量が非可換になりますが,粒子数と非可換になるのは,波動関数の位相です.強相関電子系における顕著な現象として,金属-絶縁体転移がありますが,単純な解析では絶縁体にならないのに,位相ゆらぎによって絶縁化を説明できる場合があります.有機導体λ-(BETS)FeCl4における金属-絶縁体転移において,位相ゆらぎが重要な役割を演じていると考えられます.(T. Morinari, J. Phys. Soc. Jpn. 89, 093702 (2020).)

古典論ではある種の保存則が成り立つのに,量子力学では保存則が破れてしまう.そんな不思議なことが素粒子物理学では古くから知られていました.こうした現象は量子異常と呼ばれています.近年,トポロジカル物質において,この量子異常の物理と関連する現象が見出され,多大な関心が寄せられています.当研究室でこれまで調べてきた有機導体が,低温で量子異常を実現する系であることが明らかになり,arXivにプレプリント(arXiv:2004.04364)を投稿しました.対称性というよりは電子間の強い相関効果によってこの特異な状態が安定化すること,次元性が変化することなどが他の系に見られない面白い特徴です.また,非自明な形で時間反転対称性と空間反転対称性が破れており,この点もさらに探求する必要があります.

8月8日〜10日に分子研で開催された研究会「有機ディラック電子系におけるトポロジカル現象と新奇物性開拓」に参加してきました.久々の有機ディラックの研究会で,たいへん盛況でした.新進気鋭の方々とも議論ができ,とても有意義でした.最近見出したディラック電子状態について発表しましたが,やはり新しい電子状態のようです.面白い位置付けができるかも.(2019/08/10)

2次元強相関電子系における短距離反強磁性相関と磁気ポーラロンについて,モデルの提案と簡便な強結合理論の構築を行いました.( preprint, arXiv:1906.06031

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